エリック・カントナのインタビュー

通勤の際に昨年,エリック・カントナがフランスのラジオ局で行ったインタビューを聞いた。インタビューと言っても30分の番組で5回連続のインタビューなのでかなりの長さになる。ポッド・キャストのシステムの調子が悪くて3回分しか聞けなかったが,十分に楽しいインタビューだった。

実はカントナがエースだった頃のフランスはワールド・カップ出場を逃していたり(1994年),主にイングランドで活躍していたこともあり,実はサッカー選手としてのカントナのことはよく知らなかった。今回のインタビューで,彼は写真を撮ったり,映画に出演したり,映画の製作を手がけたり,絵画の収集をしたり,あるいは市民運動に取り組んだりと,大変な才人であることを初めて知った。また,彼のイメージへの関心は,父親と展覧会や画廊で絵を見ていた頃に根付いたことも知った。しかし,やはり一番面白かったのはサッカー選手からみた,いい監督とは何かという話だった。彼にとっていい監督とは,選手のモチベーションを上げる言葉,心理学を持っている人間だ。特に,今日日は指導者育成のシステムが出来上がっているので,監督もどのような状況でどのようなことを言えばいいかは,きちんと学んでいる。しかしそうしたお勉強した言葉は選手の胸にはなかなか響かないらしい。監督は,彼自身のサッカー観に基づいた言葉で,彼自身の調査に基づいた言葉で,しっかり選手のモチベーションを上げることができる人らしい。彼にとって監督とは,戦術家,コーチである前にまず,選手の心を掴む心理カウンセラーのような存在なのだ。カントナは,監督やコーチがなんと言おうと,我が道を行くというか,自分のプレイスタイルを決して変えないタイプの選手と思っていただけに,彼の監督観は,彼の心理的な洞察力と観察力を示しているようで,大変面白かった。
ジョゼ・モウリーニョ ―勝者を生み出すメソッド―

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