2010-04-01から1ヶ月間の記事一覧

地位と機会

フランソワ・デュベ著『地位と機会:社会正義再考』を読む。 著者のデュベは,現場での丁寧な聞き取り調査と幅広い読書に基づいた理論的考察を駆使して,近年,教育にかんする研究を多数発表してきた。今回の新作はサルコジ政権下のフランスにおけるリベラリ…

安くてうまいステック・アッシェ

先日,急に魚が食べたくなって,ある店に向かおうと地下への階段を下りようとすると,階段を上ってきた板前とすれ違った。今閉めた所です,とのこと。仕方なく近くのフランス料理の店に。ランチが1000~1500円程度のこじんまりした店。新宿食本 2015 (ぴあMOO…

駄作も名作

鈴木英夫の『不滅の熱球』(1955),『やぶにらみニッポン』(1963)を見る。 『不滅の熱球』は伝説の名投手沢村栄治の半生を,かなり大胆に脚色した作品。沢村を池辺良,沢村に憧れ,最後は妻となる女性役を司葉子が演じている。池辺のピッチングも見ていて…

必殺中華

昨年末,勤務先から車から15分くらいの所に中華料理の店を発見。文字通り入り浸っている。 場末と呼ぶにふさわしい場所なのだけれど,近くには学校,警察署,市場,テニスコートがあったりという訳で,昼間はいつも繁盛している。 夜は完全予約制で,コース…

手遅れ...

東郷雄二『文科系必修研究生活術』(ちくま学芸文庫)を読む。 10年くらい前だろうか,子育てに追われているころに単行本で読んだ本が,コンピューター・ソフト関連の情報をリニューアルして文庫になったので,パラパラと斜め読みしてみた。 最初に読んだ時…

ドイツのやくざ映画

ファティ・アキン(ファーティフ・アクン)の『ソウル・キッチン』と『Kurz und schmerzlos(フランス語タイトルは歯車=抜き差しのならぬ状況)』を見た。 トルコ系ドイツ人の監督が撮った作品でありながら,とても懐かしいものを感じた。両作品共に,ドイ…

泣ける社会学

教育学とか,社会学で泣けるのにお目にかかれることはめったにないと思うのだが... このステファヌ・ボーの『80%が大学入学資格取得,その後は...?』は例外的な本だ。 フランスでは80年代半ばに,当時はバブルの真っ最中でとても景気の良かった「日本に学べ…

『愛妻家』でいることは難しい

『今度は愛妻家』を見る... この作品は映画ではなく,舞台にのせるべきだと思いながら見た後で,知ったのだが,原作は中谷まゆみの芝居だったそうな。 予備知識のない人間に上のような感想を抱かせてしまうということは,やはり映画として失敗作なのだと思う…

男に期待しない女,あるいは和食が一番!

川上弘美の『センセイの鞄』を読む... 近年売れに売れた小説の一つなのでご存知の方も多いだろう。 魅力は3つ。 まずは物語の設定。70歳すぎの退職した元高校の国語教師と,30歳過ぎ,つまり女盛りの女性との恋愛譚。しかも女性のほうが半ば強引にアプローチ…

知性の有無...

この冬は体調が悪かった上に,電車や飛行機で移動せざるをえないことも多かった。そのおかげで才能のある日本の現代作家も発見できた。 星野智幸もその一人。短編集『われら猫の子』を読む。 とても頭のいい作家だ。そしてとても上手い。ストーリー・テーリ…

男の隠れ家

ベルギー映画の『ロフト』(2008年,エリク・ヴァン・ローイ監督)を見た。 中年の建築家は自分の設計したマンションの一室の鍵を,親友たちに渡す。「君たちの好きに使っていいから...」とは言っても彼も含め,親友はみんな妻帯者。すると... 男とは哀しい…