知性の有無...

この冬は体調が悪かった上に,電車や飛行機で移動せざるをえないことも多かった。そのおかげで才能のある日本の現代作家も発見できた。
星野智幸もその一人。短編集『われら猫の子』を読む。
とても頭のいい作家だ。そしてとても上手い。ストーリー・テーリングもさることながら,独自の文体をもっている。ここまで書くことの意味や,文学史を意識しながら,しかも自分の文体を駆使しながら作家活動をしている男性作家は,今日の日本では珍しいのではないだろうか(舞城王太郎を除けば...)。
女性版,金井美恵子といっところか。ただし金井美恵子よりは,ユーモア感覚と自分への諧謔に優れている気がする。
ただ,こういう時代である。これだけ上手い作家だからこそ,そして海外での経験も豊富な作家なのだから,どうか日本の<現代社会>や<歴史>に向き合った作品を書いてもらいたい。プルーストではないけれど,知性がこの作家の才能を邪魔しないことを祈るばかりだ。