男の隠れ家

ベルギー映画の『ロフト』(2008年,エリク・ヴァン・ローイ監督)を見た。
中年の建築家は自分の設計したマンションの一室の鍵を,親友たちに渡す。「君たちの好きに使っていいから...」とは言っても彼も含め,親友はみんな妻帯者。すると... 男とは哀しいものである,皆がこの一室をラブホ代わりに使い始める。みんなにとっての自由な空間ができて目出たし目出たしのはずが,映画は件の一室のベッドに転がる全裸女性の惨殺死体のイメージから始まる。
そして,この事件の謎解きと共に,親友たちの複雑な人間関係,そして,もてるにせよもてないにせよ,中年男性の哀れな心理が浮かび上がる...というお話。
まあ,私も迷える(しかもまったくもてない)中年なので,この映画の登場人物たちの気持ちは,よ〜く分かってしまうのだが... 確かにヨーロッパには日本ならどこでもあるラブホというものがない。しかも,パリ,ロンドン以外に大都市というものがない。その他は小,中都市だ。どこでも知り合いに出くわしてしまう。このような状況だからこそ,いつでも使えるマンションの一室のような自由な空間がヨーロッパ中年男性の憧れになってしまうのだろう。
この映画,作品としては大したことはないのだけれど,ベルギーでは当たりに当たったそうな。こんなに救いのない映画がヒットする社会なんて,やっぱりどこかおかしいと思う。やっぱり宮崎駿の映画が当たる社会の方が,遥かに社会としてマトモだと思います。