家族の回帰...

知り合いから薦められて『サマー・ウォーズ』(細田守,2009)を見る。
よく出来た面白いアニメではある。アカウントを持てば,ショッピングはもちろん,電話,行政手続きすべてができてしまうOZという仮想世界と,信州の旧家である陣内家の話が平行して語られてゆく。
ただし... IT,仮想世界,オンライン・ゲーム,グローバル化といった,今風の意匠を纏ってはいるものの,結局は,一家の精神的な大黒柱である祖母の死を契機に,家族が再び一致団結して,世界のそして家族の秩序を回復するという,よくあるパターンの物語であることは忘れてはなるまい。祖母のメッセージが,子たちはもちろんだが,一世代跳んで,孫たちの世代に伝わるというのは興味深い。このアニメの主なターゲットであある若者たちの,心の拠り所は,劣化する日本に対してどう対処してよいか分からずにアタフタする親たちではなく,古き良き日本を知り,孫たちに滅法甘いオジイちゃん,オバアちゃん世代なのだろう。
この点,ベトナム戦争で深く傷ついた若者たちの参照点も,自分たちを戦争に送った親世代ではなくて,その上の祖父母世代だったことを思い出せる(例えば『悪魔のいけにえ』)。翻っていえば,今の若者たちが祖父母世代を心の拠り所としているとすれば,今の日本の社会の停滞,混迷ががそれだけ深刻であることの裏返しともいえよう。
話は飛ぶが,この映画が描く世界,価値観からすると『ガンダム』(もちろんファースト・ガンダムです)がとても清々しく見えるのは,私だけだろうか?