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野球ネタが続いたので,最近旅先で読んだ三文小説の話しなど...
かつて駐露フランス大使館に勤務していた知人から薦められて読んだのが... フレデリック・ベグベデール(Frédéric Beigbeder)の『99フラン(99 francs)』
最先端のCMクリエイターの,麻薬と金とセックス(欲求不満だらけなのだけれど)を描いた小説。
ただ,文体は如何にもジャーナリスティック。まあ,私のようにフランス語が覚束ない人間には簡単に読み進められて助かるのだけれど。
作者自身がCMクリエーターだったせいか,フランス業界の様子がよく分かる点は興味深い。
そうした点で,文学性というよりは社会性を前景化している点でミシェル・ウエルベックの系譜に連なる作家といえよう。ただし,その考察はウエルベックの方が遥かに冷徹だけど。

日本のCM業界は,CM自体のの時間が15秒でクリエーターの想像力が発揮しずらい(というか,そもそも誰もそんなものは求めていない)上,国内のマーケットは電通博報堂と芸能プロダクションが完全に抑えてしまっている,いわば無風状態だ。
それに比べると,この小説を読む限り,フランスのCM業界は各国の制作会社がしのぎを削る,かなりシビアな世界のようだ。