『<私>時代のデモクラシー』


最近,宇野重規『<私>時代のデモクラシー』という本を読んだ。
大変面白かったし,勉強にもなった。
トクヴィルを導きの意図に,現代社会,特に現代日本社会の社会,政治のあり方を論じたもの。
個人間の平等がすすむにつれ,人は自分,<私>への関心がたかまり,それが不平等に過度に敏感になり一方で,<私たち>という連帯を通じてその不平等を解消する動きも起こりにくくなっている。社会の衰弱である。
この事態を,著者は様々な社会学者の研究を巧みに引用+援用しながら,分析していく。特に私は近年の政情の推移の分析や,近代民主社会とはすなわち,常にみずからの方向性,価値を自らのうちに確認しなければならない,<他者なき社会>として現代民主主義社会を分析している一節が面白かった(他にも面白いところはたくさんあったけれど... アメリカに定着しているセラピー文化やオーディット文化への批判的分析など... なかなか中身の濃い新書です)。
参考文献がきちんと巻末にあげてある点にも好感を持った。お勧めです!