たかが学校,されど学校

学会発表が日曜に終わり,論文も昨日なんとか提出できたので,今日はDVDを2本見る。
ルネ・アリオの『ピエール・リヴィエールの犯罪』とニコラ・フィルベールの『ぼくの好きな先生』だ。
凄惨な犯罪が起こるまでを,ミシェル・フーコーが出版した犯人ピエール・リヴィエール本人による手記に基づいて映像化した『ピエール・リヴィエールの犯罪』と,退職間近の教員と幼稚園生から小学5年生(フランスでは小学校は5年制)まであわせて十数名の複式学級の生徒との交流を描いた『ぼくの好きな先生』。
ニコラ・フィルベールが参加している(前者には助手として,後者には監督として)両者には全く共通点がなさそうだ。
ところが,この2作の環境はよく似ている。『ピエール・リヴィエールの犯罪』はノルマンディー,『ぼくの好きな先生』は中央山地という違いはあれ,どちらも都市文明から隔絶した農村が舞台になっている。閉ざされた空間で,一方の映画の主人公はひたすら母への憎しみを募らされてゆく。一方の映画では,田舎の農村の子供たちが背負っている社会的・文化的ハンディを教育がわずかなりとも埋めていく...
ピエール・リヴィエールの救いのない無表情さと,『ぼくの好きな先生』の子供たちの笑顔や泣き顔がなんとも対照的だ。ピエール・リヴィエールが家族以外の誰か,何かで出会っていれば... 学校で,友達とちょっとした気晴らしが出来たなら... きっと彼にも違った夢や野心が芽生えていたのではと思わずにはいられなかった。たかが,学校,されど学校である。

的外れな感想ですが,両者とも,非常に印象深い名作です。
お時間のある方は是非御覧下さい。
特に,『ぼくの好きな先生』は,監督ニコラ・フィルベールのインタビューが素晴らしいです。

しかし,ミシェル・フーコーへの関心がこれほど高い日本で,『ピエール・リヴィエールの犯罪』のDVDが販売されていないのだろう?結構売れると思うのだけれど...