もうひとつの映画史

加藤幹郎の『映画とは何か』を読む。日本語でこれほど刺激的な映画研究が読めるとは!お勧めです。お裾分け...

映画は視線を組織化する。そしてその組織化は,複数の候補の中化からの選択と,その選択されたもののさらに優先順位をつけるというかぎりで,きわめてポリティカルな組織化である。それはせめぎあう複数の力の折り合いとして実現される。それゆえ映画の観客は,視線の組織化を通じて映画の唯一正当なる主体として政治的に生産される。じっさい映画学者クリスチャン・メスとスティーヴン・ヒースが示したことは,映画は構造的に三つの視線を組織化するという事実である。すなわち登場人物の視線,観客の視線,そしてキャメラの視線である。それらは相互にリレーされ,観客は映画の内に縫合される。