ルッキーニにはもったいない!

〆切間近の論文からにげるように映画館へ。
ファブリス・リッキーニ主演の『屋根裏のマリア(Les Femmes du sixième étage)』を見た。
ストーリーは... 60年代、フランス。祖父の代からの信託銀行の頭取をつとめるジャン=ルイは、妻や子供たちと不自由はない生活を送っていた。しかし、若いスペイン人家政婦マリアを雇うや,若いマリアへの恋心から、考えを変え,ついに家庭を棄て,みずから家政婦たちが暮らす屋根裏=7回に引っ越す...
正直な印象は... 「なんでこんな映画にあのルッキーニが?」だった。
彼のステージを見たり,あるいはセリーヌランボー,ラ・フォンテーヌの朗読を聞けば分かるように,彼には彼にしかできないテキスト解釈をする独特の知性と,それを演じる抜群の技術がある。そんな彼がどうして,こんな平板で,陳腐なシナリオの映画に出演するのか...人生を変えてみたい悩める中年を狙った映画なのだろうが,それなりの人生経験を積んできたオジさん,オバさんをがこんな安易なシナリオにはたしてどれだけ引っかかることか... ?
頭の良い彼のことだから,これまで毒の強い役や,個性の強い役柄を演じてきたが故に,ここらで善意の人,個性のない中年の役柄をあえて演じてみたかったのかもしれないが...
次回はルッキーニにふさわしい映画で彼の怪演を見たいものです。