ミシェル・ペトルチアーニ

映画『ミシェル・ペトルチアーニ』(邦題は『情熱のピアニズム』)を見た。
1999年に36歳の若さで亡くなったフランス人ジャズピアニスト,ミシェル・ペトルチアーニの生涯を描いたドキュメンタリー映画だ。彼は生まれたときから骨が折れやすく,身長もわずか1メートル強というハンディキャップを抱えてはいた。だが。彼は障害を才能と驚異的な楽天的思考と,好奇心と強靭なチャレンジ精神で楽々と乗り越える。
ドキュメンタリー映画としての作りはきわめてオーソドックスで,彼の生前の映像資料と,彼のことをよく知る人々(家族,ミュージシャン,プロデューサー,そして恋人たち)の証言から構成されている。おそらく,ペトルチアーニの音楽を聴いたことがない人でも抵抗なく映画の世界に入っているのではないだろうか。
私自身,彼の好奇心,楽天的思考とチャレンジ精神に驚嘆した。また証言の中では特に恋人たちの証言に心を打たれた。いわば彼の身勝手で彼から棄てられた女性たちばかりなのに<恨み節>がまったく聞こえてこない。みんな彼との出会いに感謝し,彼との楽しく過ごした時間をとても大切な思い出にしているのが印象深かった。彼の人柄故なのか,彼が鬼籍にはいってしまったからなのか,判断は難しいが(どちらかに決めつけても仕方のないことだ)。一方で,ほとんど誰も,特にペトルチアーニ自身がほとんど母のことを語らなかったのが印象的だ。もしかすると,彼の女性遍歴は母との関係が影響しているのかもしれない。
すこし心残りなのは,セッションやコンサートで彼がピアノを弾く姿をもう少し見たかったことだ。とはいえ,この映画がとても魅力的であることに変わりはないのだけれど。

予告編は酷いですが,幸いなことに映画自体は予告編よりもずっといいです。

Michel Plays Petrucciani

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Trio In Tokyo (+1 bonus track)

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