『機会を与える学校:公正な学校とは何か』

堅実な理論的知識と,精力的なフィールド・ワークを武器に次々と興味深い著作を発表している教育社会学者フランソワ・デュベのちょっと前の著作。
この作品もとても面白かった。特に,自由な学歴社会で学校が果たす<選別機能>故に,今日学校が多くの若者,つまり学歴競争の敗者にとっていかに残酷なものであるかをえぐり出している箇所はとても興味深く読んだ。
彼曰く,自由で平等という建前が全員に受け入れられている社会では,だれもが本人の意志とは関係なく学歴競争に参加している。そして,学歴競争の結果がどのような不平等を生み出そうと,学歴競争自体が公正という建前がある以上,その不平等は,競争への参加者全員が受け入れなければならない。しかも,その不平等の責任は学歴競争に加わった者全員が等しくが背負わなければならない。なぜなら,複線型教育システムが棄てられた以上,敗北の結果を生まれや,家庭の収入,自分が帰属する社会階層のせいにすることは原理上許されないからだ。

学歴競争がもしかすると日本以上に激烈で,学歴への信仰が日本以上に強く深いフランスの現状の分析ではあるのだが,学歴社会であり続け,フランスのような格差社会に近づきつつある日本の教育を考える上でも,とても興味深い著作だと思われます。
子供が受験を控えた日本の教育パパ・ママに読んでもらいたい本です。

DUBET (François), L'École des chances : qu'est-ce qu'une école jsute ?, 2004, Paris : Éditions du Seuil, coll. « La République des idées », 97 pp.