卒論を書き始める

卒論演習
今年は卒論の指導のやり方を変えることにした。
去年までは密室での指導だった。卒論演習の時間と昼休み,学生さんが多い時は午後の時間も使って,一人一人に割り振られた時間帯に研究室に来てもらう。ペースは週に1回が原則なのだけれど,大抵は2種間に一回。
原稿のデータをパソコンに落として,そこで話し合いながら,データに手を入れていた。名付けて<歯医者方式>。
今年は,学生の数も少ないし,皆さん熱心なので,<合評会方式>に変更。書いて来た原稿にみんなで質問して,批評しあってもらう。相変わらずいろんな話,質問が出て,聞いていてとても面白い。
時間が少しだけ余ったので,前回見た『東京物語』の感想を聞く。『麦秋』『晩春』に比べて,感情移入がしやすかったという意見が女子学生からでた。
確かに登場人物すべてが紀子の結婚のために行動する全2作品と比べると,登場人物がそれぞれ勝手な方向を見ている『東京物語』は確かに<開かれた>,<風通しのいい>作品なのかもしれない。
私自身の感想を述べさせてもらえば... 前回(いつだったか...)見た時よりも印象がかなり違う。
前回見た時は,主人公の老夫婦がかわいそうでならなかった。時に,老妻に先立たれ,一人になって夏の長い午後をやり過ごす笠智衆の姿には胸を打たれた。
しかし,今回はどちらかというと<爽快>な印象を持った。
なんというか... 人生ってこんなもんか〜〜といった感じ。
親は子どもが自立するため,つまり自分たちを必要としなくなるようになるために,親から羽ばたいて自分の人生を生きるために,子育てする。
若い頃には<親への裏切り>に見えた行為,言動が,今は<人生って,親子ってこんなもの>とかなり肯定的に受け入れられるから不思議だ。親を裏切ってこその子ども,というのがなんとなく分かり年に自分もなったのだろうか?
おそらく,こうしたドライというか,開かれた親子関係の描写が,外国のファンには受けるのかも...