ウィリアム・ケントリッジ:ドローイングという名の爆弾

ウィリアム・ケントリッジ展『ウィリアム・ケントリッジ 歩きながら歴史を考える そしてドローイングは動き始めた……』(於:東京国立近代美術館』)に行ってきた。
とても興味深かった。
彼の作品は,音楽,歴史,文学,映画,絵画等の豊かな知識が随所にちりばめられたり,見ることとは何かを見るものに問いかける,とても知的な作品だ。だが,それは多くの現代美術作品に見られがちな,単なるソフィストケートされた洗練された作品ではない。ドローイングのモンタージュと音楽で出来た彼の作品は世界に働きかけ,現実を変えようとする,きわめてパーフォーマティヴな作品だ。知的であると同時に<闘う>作品なのだ。
南アフリカの人種差別,それに基づいた経済的搾取,イタリアによる,エチオピア侵略スターリン主義ケントリッジのドローイングは襲いかかる。
特に展示の最後を飾る,スターリン主義を扱ったインスタレーションでは,ブハーリンの弾劾裁判の記録,複数のスクリーンに映し出された,当時の記録映画とドローイングを交えた映像,けたたましい音楽(フィリップ・ミューラー)がうまく絡み合って,まるで炸裂する爆弾の中にいるような錯覚さえ覚えた。

これほど戦慄的な爆弾が皇居側の美術館に仕掛けられているとは!
東京もまだまだすてたものではない。