校区を考える


シュークリ・ベン・エイェド『校区と教育市場』(Choukri Ben Ayed, Carte scolaire et marché scolaire)を読む。
ニコラ・サルコジがフランスの大統領になっていらい,フランスでは校区の制限がお幅に緩和されたらしい。本書の目的は,この政策に批判にある。他国の事例も引きながら,校区の自由化は教育成果の向上には必ずしも資するものではない点,校区にはなんらかの制限が必要であること,校区の自由化は一部の階級にしは有利でもその他の階級には教育の質の低下につながることが,本書のおもな主張といえる。
2009年の出版なので,サルコジ以後の校区政策が具体的に紹介されているかと期待していたので,最近の状況の紹介がほとんどないのはまったくもって残念。
ただ,アンケート調査の結果で見る限り,2006年秋の大統領選挙のプレ・キャンペーン中に,フランス人の校区への態度が激変したというのは,とても興味深い。どうして<タブーが飛んでしまったのか?>
学校区について一冊よむとしたら,Marco OBERTI, L'École dans la ville : ségrégation, mixité, carte scolaire, Paris : Presses de la fondation nationale des sciences politiques, 2007, 302 pp.(マルコ・オベルティ,『都市における学校:隔離,混成,学校区』,パリ,パリ政治学院出版局,2007年,302 頁)が断然お薦めです。
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