魔性の女...

『TATOO<刺青>あり』(1982年,高橋伴明)をみた。
1979年1月に大阪で起きた三菱銀行人質事件をテーマにした映画。事件そのものがあまりに凄惨なためだろう。映画はこの事件そのものは描かず,テーマを事件に至るまでの犯人の軌跡と,生い立ちに絞り込んでいる。ただ,映画は何故,犯人がこのような事件を起こしたのかについては,ほとんど何も語っていない。
当時,この映画を見ていたら,人質事件の描写も無ければ,犯行に至るまでの犯人の心理的・物理的説明もかなり不十分な映画に,かなりの戸惑いを覚えたかもしれない。

だが,映画とはフシギなもので,製作・公開から30年以上たってこの作品を見ると,何とも言えない魅力を感じてしまう。画面の至る所に今はなき<昭和>が溢れているからだろう。
映画には,今は無いファッション,田舎の人間関係,娯楽,風俗,風景,住居,電化製品,商売,車,男,女,男女関係でいっぱいだ。
中でも,犯人(宇崎竜童)の情婦を演じる関根恵子が素晴らしい。情婦は自らを「男をダメにする女」と語るのだが,この映画の関根恵子はまさしくそんな危うい魅力に溢れている。

最近はほんとうに職場の問題でアップアップ。2時間でいい... 暗闇に浸って,仕事のこと,職場のことをしばし忘れて,ゆっくり映画が見たい...