足立正生の作品

『叛女 夢幻地獄』(1970),『性輪廻 死にたい女』(1970),『女学生ゲリラ』(1968),『性遊戯』(1968)... 足立正生の作品をいくつか見た...
フシギな映画だ。どの映画でも男と女が簡単に交わる... まあ,それはいい,でも「何のため」なのか分からない。快楽のためか,愛のためか,金のためか...?まったく分からない。性表現に関する検閲がいまよりもずっと厳しかったせいもあると思うのだが,彼の映画で描かれる性愛行為は,今日から見るときわめて<抽象的>なのだ!性に関する文化の違いと行ってしまえばそれまでなのだが,彼の映画は『愛のコリーダ』と同時代である!彼の作品を見ていると,男と女が交わるってこんなもんじゃないだろうと,どうしても思わずにいられない。
とはいえ,白黒のフィルムでとられた映画だ!どの映画にも白黒ならではの美しさがある。『性輪廻 死にたい女』の雪景色には,一瞬とはいえ,マルコ・ベッキオを思わせる何かがあった。
また政治の描き方も面白い。いくつかの作品における<政治的なるもの>の描き方はゴダールの映画を思わせる。
同時代のヨーロッパの巨匠と一瞬ながら交差しながら,足立の映画は絶望的なまでに<幼い>(これは,彼の映画の明るさ,楽天的な世界観に由来しているのかもしれない。そしてそれは彼の,そして当時の日本の魅力でもあるのだが)。何故か?それを考えてみることは,文化史的には魅力的な作業かもしれない。