暢気な暴力

先日,『戦場でワルツを』(2008,アリ・フォルマン)という映画=アニメを見た。
監督自身が従軍していた1982年のレバノン戦争におけるサブラ―シャティーラの虐殺に関する記憶を,当時の戦友との対話,関係者へのインタビューから取り戻していくという物語。
この物語は,イスラエル側の視点から語られた物語で,パレスチナ難民からの証言はまったく取り上げられていない。その点で,物足りないと思われる向きも多いのかもしれない。ただ... 戦争の暴力が加害者(単純化した物言いだが)からの視点で語られることは,被害者の側から語られることに比べれば圧倒的に稀であること,事件からまだ30年足らずしかなっていないことを考えると,この映画自体が貴重な証言なのだろう。
 個人的には,戦車に乗ったイスラエル兵士たちが,町を破壊しながら行軍する時に歌っていた,レバノンをテーマにした歌に戦慄した。暴力的な歌詞と兵士たちの無邪気な唱い方にのコントラストに,人はここまで無邪気に暢気に野蛮になれることを思い知らされたようで...