オペラはオペラハウスで...

ちょっとした必要に迫られて,プッチーニの『マノン・レスコー』のDVDを職場の図書館から借り出して眺めてみる...
なんとも中途半端。
やっぱり舞台芸術は,舞台全体が見えないとつまらない。あたりまえのことだが,オペラは舞台から適当に離れた所にゆったり座って,音楽に委ね,遠くの舞台は妄想にまかせて自分が見たいものを見た気になっているのが一番だ。
しかも,貧乏学生時代に天井桟敷から見る癖がついているせいか,バルコン席の正面,昔のイタリア式劇場のいわゆる<王の視点>から歌手をアップで捉えたシーンをパソコンの画面で見ても,まったく気持ち盛り上がらない。劇場でワクワクした気分で眺めてこそのオペラだ。子細に見るものではない。
そもそもプッチーニは苦手だ。題材がお涙頂戴的なきわめて大衆的なものがおおい(『蝶々夫人』『ラ・ボエーム』そして『マノン・レスコー』)のは演歌好き(これ一応比喩です)の私としては大歓迎なのだが,音楽は題材に似合わずとても現代的(に私には聞こえる)に聞こえてしまう。結局,登場人物に感情移入も出来ない。
しかも『マノン・レスコー』の場合は,下手に原作を比較的よく知っているせいか,原作ではこれでもかというほど執拗に描かれている,デ・グリューとマノンの常軌を逸した,ご都合主義(特にデ・グリューの感動的なまでのダメ男ぶり!),自堕落ぶりがオペラの台本という制約のせいで,ほとんど消えているのがいかにも残念。