ブラジルのサッカー・ドキュメンタリー
榑谷美紀(Kuretani Miki)監督『フッチボール・ブラジル』(2009)を見る。
ブラジルのサッカーにかんする報道番組やドキュメンタリーは枚挙にいとまがない。
国際的なサッカー・イベントが催される度に,ブラジルではなぜサッカーが強く,また盛んなのかを題材にしたドキュメンタリーが絨毯爆撃のように放送される。そしてそうした多くの番組は,ブラジルのサッカーの強さを,ブラジル社会における貧富の差,その暗い歴史(奴隷制度,植民地社会)に求めている。
この枠組みはどうしようもないので,作る側としては,この枠組みの中で何を見せるのかが,監督の腕の見せ所になる。
結果を言えば,榑谷(私は彼女が日系ブラジル人なのか,日本人なのか知らないのだが...)はこの挑戦に結構成功していた気がする。
映画冒頭に登場する人類学者,ジャーナリスト,かつての名選手のインタビューに引く続き,スクリーンは,FCサントスの日系ストライカーに憧れ,将来は自分もサッカー選手になることを夢見る少年(6歳!)とその親子,若く熱狂的なサントスFCのサポーター,FCサントスのスタジアムの一帯に長年露店を出している老婆などを映し出す。恐らく,現役選手,ユース選手,コーチではなく,サッカーを現場の人達とは違ったやり方で生きている人達に焦点を当てたことが,この映画を他のブラジル・サッカー・ドキュメンタリーとは異なり,とても<温かい>ものにしているのだろう。
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