あなたは左ですか...


イヴ・シトンの『読解・解釈・現在化』(アムステルダム出版)の書評をなんとか,書き上げる。いつものことながら... 自分の力不足+勉強不足を痛感。

文学教育の人気がますます低下するご時世(たとえばフランスでは,90年代半ばから文学系バカロレアの選択者の割合が3分の2に減少)で,無知な大統領が悪いとか,無教養なエリートが悪いとか,グローバリゼーションが悪いと,世の中の流れを批判する,教員・研究者がフランスでは多い(日本ではどうなのだろう... 今度同僚に聞いてみよう)。
そうした流れの中で,あえてシトンは,グローバルな認知資本主義社会における文学教育の現代的な重要性を様々な視点から訴える。
その一方で,彼は文学教育も変わるべきだとこの本の中で力説する。つまり,過去の文学作品と現代の読者との歴史的距離を埋めることに終始するのではなく,現在の読者が生活する文脈において文学作品が持つ力・意義を取り出すことにもう少し目を向けてみませんかと...

現状を耐え忍ぶのではなく,<打って出る>姿勢に深く感銘した次第。
著者は第一線で活躍する18世紀の思想,文学研究者なのだが,自ら政治的には左派であることを認め,文学を教える左派系知識人に,今何ができるかを問う著作もあるようだ。
よろしければ,こちらのインタビューをどうぞ:Yves Citton interrogé pour Mediapart par Antoine Perraud - Vidéo dailymotion