王皓と水谷隼

ロッテルダム卓球世界選手権の準々決勝,水谷隼対王皓戦を見た。
勝つのは容易ではないことは分かっていたこととはいえ,あそこまで徹底的にやられるとは日本のファンは思っていなかっただろう。
サーブ,レシーブ,ブロック,打ち合い,すべての点で圧倒された。まったく歯が立たなかった。恐らく,ここまで中国選手と力の差があるとは,日本の関係者も予想していなかっただろう。
ここまで徹底的にやられると,日本としてはこれまでの強化方針の再考をせざるを得ないであろう。
ここ十数年来,日本の卓球は過去の栄光を忘れ,中国やヨーロッパから学ぶことに徹して来た観がある。そのおかげで,確かに技術的には日本の卓球は目覚ましい進歩を遂げた。だが,水谷ー王皓戦を見るに,未だに技術で大きな差があること,そして打ち合いでも中国に太刀打ちできないことが分かった。
一方,今大会も,ごくわずかだが中国選手に善戦した選手がいる。サムソノフ,ティム・ボル(準決勝に進んだ唯一の中国以外の選手!),ユ・スンミン=柳承敏の3選手だ。3選手ともプレースタイルは大きく異なるが,共通している点が一つある。打ち合いにめっぽう強いことだ。今のままでは,日本選手はヨーロッパの選手には勝てても中国選手に勝つのは難しいだろう。残念だが怖さがないからだ。
彼等3選手はたとえサーブ,レシーブで後手に回っても(ティム・ボルはこうした細かいプレーもめっぽう上手いのだが),ブロックで一球凌げば,中陣で打ち合いながら,反撃できる。中国選手と五分に渡り合える。そしてチャンスがあれば,三球目攻撃で相手のブロックを打ち抜くパワーがある。だが,残念ながら,吉田海偉をのぞき,今の日本選手にかけているのはこの打ち合いの強さだ。
水谷選手は台から下がってしまうと,凌ぐことはできても,そこから反撃ができない。打ち合いに弱いのだ。だから中国選手からすると,怖くない。しかも,三球目攻撃でしとめるパワーがないので,サーブ・レシーブで後手に回っても,中国選手は慌てない。だから,思い切ったレシーブをされて,ますますこちらが攻撃できなくなる。
これからの日本卓球が目指す道は,中国,ヨーロッパの技術を謙虚に学びながら,かつての日本のお家芸だった中陣での打ち合いでの強さを取り戻すことだろう。ありきたりな感想だけれど,他には道がない気がする。頑張れ水谷選手!頑張れ日本卓球!