水谷隼とアドリアン・マテネ

ロッテルダム卓球世界選手権の男子4回戦,水谷隼アドリアン・マテネ戦を見た。
マテネの卓球を見たのは初めて。結果は水谷が4−1で準々決勝進出を決めたので,水谷の楽勝のように見える。しかし,内容的にはかなり水谷が押されていた。マテネはこれから要注意の選手だと思った。
フォアハンドの安定感と,台上の細かい技術に問題はある。しかし,台から離れた時の打ち合いの安定感は素晴らしかった。身長が高いので,前後左右に振られても,うまく対応できてしまうのだ。また,どんな状況でも一発で打ち抜く力のある驚異的なバックハンドがあるので,少々守勢に回っても苦にしない。そういったことを考えると,もう少しフォアハンドが上手になれば,ボル,サムソノフと並ぶヨーロッパのトップクラスの選手になるだろう。来年のロンドン大会までの成長が楽しみ。
一方,水谷の試合巧者振りも見事ではある。この試合では,マテネのミスに助けれたように見えたが,これも3ゲーム以降は徹底してマテネの弱点のフォアをついた水谷の戦術が奏効したと見るべきなのだろう。しかし,中陣での打ち合いではかなり歩が悪かったように見受けた。また,水谷のフォア攻めに慣れたマテネのミスが第5ゲームではかなり減っていた。この第5ゲームは16-14で水谷が拾ったものの,もしもこのゲームがマテネの方に転んでいたら,果たして水谷は勝つことができただろうか?
4回戦で負けてはいけないというプレッシャーがあったのだろうか,この試合の水谷は体の切れがイマイチで,表情も硬かった。
さて,準々決勝の王皓戦は厳しい戦いになるだろう。マテネ戦のようなラリー戦では,恐らく勝負にならないだろう。王皓から見れば,試合巧者で器用ではあってもパワーで劣る水谷の方が,一発の破壊力のあるマテネよりも,組みやすいのではないだろうか。
とはいえ,世界選手権の準々決勝となれば,何が起こるか分からない。頑張れ水谷選手!