フランス大統領選挙雑感... 続き

すでにフランスの新大統領が就任してしまった後で,選挙の雑感を書き続けるなんて,間が悪すぎるのは分かっているしかし...

オランドとサルコジの経済政策の違いはたしかにはっきりしている。日本の報道は2人の経済政策にかかわる方針に対する有権者の見方が勝敗を分けたというふうに報道されているようだ。
たしかに,社会党候補が成長戦略という名の積極財政を打ち出し,サルコジはドイツのメルケルと歩調を合わせた緊縮財政を打ち出していた。
しかし,フランスでの報道を見るかぎり,有権者が注目したのはサルコジのこれからの政策,ではなくこれまでの政策のようだ。
というのも... 今回オランドに投票した人の中でも,積極財政はいかがなものかと思っている人は多いのではないだろうか。おそらく,サルコジが終盤に驚異的とも言える巻き返しができた要因の一つに,決選投票4日前に行われた3時間近くに渡るテレビ討論がある。もちろん経済政策も議論されたが,サルコジは非常に巧みにオランドが打ち出した積極財政の弱点を突いていた気がする。教員の増員や,中高年層の雇用を維持する企業に補助金を出しても,財政を逼迫させるだけで,それに見合う効果はないことを,サルコジは説得的に訴えていた気がする。
政策論争以前の問題として,選挙戦に入る前からフランスではサルコジへの不満が鬱積していた。そもそも選挙前は有権者の2/3がサルコジをネガティヴに評価していたのだから,選挙戦を通じて,彼の緊縮財政が広く理解されたとも理解できる。
サルコジの敗因は政策そのものよりも,彼の人格,政権運営の仕方,財界・マスコミとの癒着,親族の恣意的な登用等々に起因していたちいえるだろう。だから,フランスの有権者は緊縮財政にノンを突きつけたとか,積極財政を支持したというよりも,この5年間のサルコジ政権全体を否定的に評価したと考えるべきなのだ。