丁寧選手に挑んだ福原愛

2012年ロンドンオリンピックの女子卓球個人戦福原愛選手は世界チャンピオン丁寧選手に0-4で敗れた。
試合の内容は悪くなかった。プレーからはこの1年間に福原選手が大きく成長したのがよく分かった。少なくとも,彼女のフォアハンドは力強さ,精度,安定性に大きく進歩したのがよく分かった。
フォア・ストレートを意識させながら,フォアをついて相手をコートから離してバックを攻めという作戦も悪くなかったと思う。とはいえスコアからも中身からも完敗だった。
福原愛選手からすれば,作戦面からも,試合内容の面からもベストを尽くせた試合だった。しかし,この結果だ。この実力の差だ。福原選手の心中を思うと心が痛む。しかし,実力以上に,福原選手は,中国という名前に負けていたのも事実だ。幼いころから中国で練習してきた彼女は,自分程度の選手は中国にはゴロゴロしていることを,世界中の誰よりも肌身で感じてきたからかも知れない。
悔やまれるのは,第一ゲームだ。10-6から追いつかれた後で,丁寧をコートから下げたときのラリーだ。福原選手のスマッシュを丁寧選手はロビングで凌ぐ。何本かスマッシュを放った後,福原愛選手は相手のロビングにストップを選ぶ。ストップは決まらず,ボールは明後日の方向に。あそこはスマッシュを連打すべきだった。
ストップの失敗も痛かったが,ストップを選択したことが,相手の目には弱気な作戦と映ったのが痛っか。相手に「自分以上に福原は追い込まれている」と思われたのが痛かった。10-6から追いつかれたのも,スマッシュで押し切れなかったのも,名前負けのせいだ。そして,ストップを選んだその瞬間,辛うじて均衡が保たれていた勝負の流れが大きく丁寧選手に傾く。
第一ゲームをたとえ取ったとしても,福原選手の苦戦は変わらなかったかも知れない。それだからこそ,一層悔やまれるストップの選択だった。