『第三身分とは何か』

フランス革命が起こった1789年7月の数ヶ月前にエマニュエル=ジョゼフ・シィエスによって書かれたあまりに有名なパンフレット。パンフレットというとプロパガンダのためのアジビラのようなものを想像しがちですが,どちらかというと論文といってもいいような内容と構成です。
当時の社会状況を知る上でも貴重な証言です。しかし,今日の社会状況からすると,今後の民主主義のあり方,そのための負担の分担の仕方を考える上でも有益な資料のように思えます。

三身分にのみ課される税は全廃すべきである。この点に疑いはない。国家から最大の利益を得る市民が最小の納税しかしない国,負担することが恥であるような,そして立法者自身,負担者を貶めるものと考えるような税が存在する国とは,なんとおかしな国だろう!労働すると身分を落とされる社会,消費することが立派とされ清算することが蔑まされる社会,肉体労働が卑しいとされる社会,そこではまるで悪徳以外の卑しさが存在しうるかのようであり,また,卑しいといえば,何といっても肉体労働者だと言わんばかりなのだが,健全な良識のみからすれば,これは何という社会だろう!(81頁)

シィエス『第三身分とは何か』/ 稲本洋之助,伊藤洋一川出良枝,松元英実訳,東京:岩波書店,2011年,257頁,岩波文庫