山村聰,原節子,榎本明

鹿島灘の女』(1959年,山村聰監督)という映画を見た。フィクションというよりは,当時の日本の一地方のドキュメンタリーとして大変興味深かった。東京/地方という対立の強さ(こうした対立が成り立つほどまだ,地方に人材がいたということか)もさることながら,大農家/出稼ぎという対立が興味深かった。中学の時に,GHQが地主が持っていた土地を小作に分け与えて平和で民主的な日本になったという説明を鵜呑みにしていたので...
この映画では,地主が秋祭りの日か何かに集まった宴会の場で,地主の一人が「小作を優遇した農政ばかりしていると,日本の農業がダメになる」と述べるシーンがある。当時の観客の多くは,「特権階級の地主が自分の利益を守るために偉そうなことを」という思いで観ていたことだろう。しかし,それから半世紀後,小作農の利益擁護団体である農協さんのやり方や,TPPのことを考えると,今日日の農協さんよりも,50年以上前の地主の方を持ちたくなる。
鹿島灘の女』に続き,『智恵子抄』(1957年,熊谷久虎監督)を見る。高村光太郎を浜村聰,智恵子を原節子が演じていた。原節子の台詞回しはあまり好みではない。ただ,この映画では役柄の関係から,台詞が少ない。そのせいだろうか,原の演技が大変良く見えた。
映画館を出たところで,榎本明氏を見かけた。週末の朝早くから,わざわざ映画館に(どちらの作品がお目当てだったのだろうか?)足を運ぶなんて。映画好きの役者さんがまだいるんですね,日本の芸能界にも。