石川佳純選手の凄さ

最近は卓球ネタばかりで申しわけありません。先週の卓球世界選手権の余波で今日も卓球ネタ。クアラルンプールでの石川佳純選手について,幾つかのコメント。
石川選手が国際的に大きく注目されるようになったのは,2009年の横浜での世界卓球選手権個人戦でベスト8に入った時だと思います。おそらく,高一で出場したこの大会の初戦で,当時の香港のエース(ちなみに先週のクアラルンプールでもエースでした!)帖雅娜(ちょう がな)選手をゲームカウント0-3で第4ゲームも2-9の劣勢から,ひっくり返した勢いでベスト8まで勝ち上がったと記憶しています。

勝利はすべて、ミッションから始まる。

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彼女の凄いところは,その後も確実に着実に力をつけていることに尽きると思います。当たり前のようけれど,たいていの人には当たり前ことができない。振り返ってみるに,2009年の横浜では,マスコミは3人の若手選手を天才に持ち上げてはしゃいでいました。
女子の石川佳純,そして男子の丹羽孝希松平健太の3人です。どうでもいい話ですが,その後の3人のキャリアを見れば,3人とも大変な才能には恵まれているものの,いわゆる天才ではなかったことは明らかなようです。
愛は天才じゃない―母が語る福原家の子育てって?

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3人とも世界タイトルはおろか,世界ランクのトップ3に入ったことさえありません。しかも,丹羽,松平両選手は世界ランク10位以内に入ったことさえないありさまです。
でも,石川選手だけが着実に世界ランク上げています。彼女だけが,自分のプレイスタイルの特徴と,自分に欠けているポイントを見つけ,そこをコツコツ磨き,また克服することができたということなのでしょう。一方,男子の二人は確かに技術的には素晴らしいものを持ちながら,それに頼りすぎて,あらゆるスポーツの土台となる体力(パワー,フットワーク)を鍛えてこなかった。そのツケを今払っています。技術は,ふとしたキッカケで化けることがあっても,体力をつけるのには時間がかかりますから(ドーピングでもしない限り),今後二人が世界ランクを上げていくことは,あまり期待できないかもしれません。
一方,石川選手は素人の目にも,バックハンドで点が取れるようになり,体つきも筋肉モリモリになってきました。どれほど厳しいトレーニングを課しているのか,想像がつきます。メンタルでも,負けていても動揺や焦りを表に出すことがずっと減ったように見えます。他の日本女子選手にはない,風格がついてきたということでしょうか。
戦術的にも,予選リーグで敗れたドイツのソリヤ選手と,準々決勝で再び対戦した時には,あの攻め気満々の石川選手が我慢して,ストップレシーヴを多用し,ネットプレイの闘いに誘い込んで勝利していました。勝利のために自分の好きな戦い方ではなく,相手の嫌がる作戦を選択し(コーチの指示もあったのでしょうが),実行できる老獪さも身につけているのです(ただし,見ていて面白い試合ではありませんでしたが)。銀メダルが取れたのも,苦しい局面(エース対決,前の選手が負けた後に出番が回ってくる)での彼女の貢献が決定的でした。ここ数年は彼女が日本のエースとして君臨する予感がします。
さて,元天才の3人のキャリアに大きな差がついたのは何故なのでしょう?個人の性格なのか,協会の男子選手に対する育成力が未熟なのか,あるいは石川選手には福原愛という,キャリア,イメージのマネージメントのお手本がいたからなのか(容姿にも比較的恵まれた二人は,スポンサーも取りやすく,それだけ卓球に専念できる環境を自分で作れたという側面は無視できないかも)?スポーツ社会学の面白いテーマだと思うのですが,いかがでしょう?
クアラルンプールの決勝でもロンドン・オリンピックチャンピオンをあと一歩のところまで追い詰めました。
対戦相手の中国,李暁霞(り ぎょうか)選手が石川選手のフォアミドルに執拗に出していた,台上で2バウンドするかどうかのサーヴを,勇気を出して打つ勇気か,ストップレシーヴする技術があれば,かなり楽に勝てていたと思うのですが... 試合前,李暁霞は選手サウスポーの男子選手を相手に繰り返しレシーヴの練習をしていました。一方,石川選手がどれほど李暁霞選手をイメージして対策を立てていたのか。情報がないので分かりません。
いずれにせよ,これからも頑張れ石川選手!