はじめて見た『風と共に去りぬ』

恥ずかしながら,はじめて『風と共に去りぬ』を見た。南北戦争の話とは聞いていたが,こんな話だったとは。南北戦争の推移は完全な南軍視点から語られている。悪者=北軍という視点があまりに鮮明なのには驚いた。
主人公のスカレーット・オハラにもレット・バトラーのどちらにも,特にヒロインのスカレーットに全く共感・感情移入できない設定になっていることも意外だった。もっともこれは,撮影当時の演出の狙いによるのではなく,映画が描いている世界・価値観に21世紀の日本人が同意できないだけなのかもしれない。原作では,南部の豪農たちの奴隷制に基づいた豪奢な生活。そこで暮らす人々の考え,価値観がさらに肯定的に描かれているという。それだけで歴史的資料として大きな価値がある気がする。是非一度は目を通さなければ!

スカレーットは奴隷制度は議論の必要さえない当然のことと考えていて,さらに現代の感覚からすると納得できない理由で結婚する。片思いの男性への腹いせでその弟と結婚したかと思えば,金目当てで妹のフィアンセと結婚する始末だ。1939年,確かに70年前の映画なので,隔世の感があると言ってしまえばそれまでだが,現代の感覚からするとなかなか受け入れがたい考え・行動をする女性が,大衆向けの映画のヒロインになっていることに改めて驚かざるをえない。
「風と共に去りぬ」のアメリカ―南部と人種問題 (岩波新書)

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また映画の後半は,前半のスペクタクルとは違って,セックスレス夫婦が互いの神経を逆なでするような消耗戦が延々と続くことも意外だった。当時の観客はこの後半をどう受け止めたのだろうか?性的交渉の不在がヒロインに大きくのしかかっていたことを,当時の観客が見逃していたとは到底思えないのだが。自分のことととして切実に受け止めてたのだろうか?
こう考えてみると,この映画が当時大成功を収め,オスカーを総なめにした以上に,ハリウッドの企画として製作されたことに,まず驚かずにはいられない。
風と共に去りぬ [Blu-ray]

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