若者の誕生

少し古い本だが,アニエス・ティエルセの『青少年期の歴史(1850-1914)』という本を読んだ。
フランス社会が青少年に向ける視線が,教育の発展,具体的には中等教育,とりわけ初等教育後の教育,および女子教育の発展に伴い変化する様を後付けた本だ。

〈子供〉の誕生―アンシァン・レジーム期の子供と家族生活

〈子供〉の誕生―アンシァン・レジーム期の子供と家族生活

書誌情報は以下の通り。Agnès THIERCÉ, Histoire de l'adolescence (1850_1914), Paris : Belin, coll. « Histoire de l'éducation », 1999, 334 pp.
斜め読みしかできなかっただけれど,いろいろなことを学んだ。例えば...
「教育」の誕生

「教育」の誕生

1)青少年期とは男性なら性徴から兵役まで,女性なら性徴から結婚までの期間を指す
2)19世紀前半までは,多くの男子は性徴の頃にはすでに大人のように働いていたので青少年期はごく限られた若者だけが経験した
3)小学卒業後にも,学校にいる(高等小学校など)人口が増えるにつれ,青少年期を過ごす若者が増えるにつれ,彼らに青年期をどのように過ごさせるかという問題が前景化した
4)19世紀後半,特に普仏戦争後の中等教育改革にあたっては,多くの論者,関係者は,イギリスの教育法,学校制度を参照した
5)19世紀後半から20世紀にかけて,とりわけ第1次世界大戦からは青年を見る目が変わった。従来は若者は社会秩序を乱す要因とみなされていたのが,社会の未来・希望の存在とみなされるようになった。
6)若者を消費の動向を左右する,マーケティングの対象とみなすようになったのは,本書が扱っている期間よりもずっと後のこと。
特に私にとって興味深いのは4)だ。普仏戦争でドイツに負けた反省から,教育改革に乗り出した際に,交戦国にして勝者のドイツではなく,イギリスを見ていたというのが興味深い。確かに昔読んだジュール・シモンの本でも,ドイツの中学・高校よりも,イギリスの中学・高校により多くのページが割かれていた気がする。新たな課題が見つかった気がする。
死と歴史―西欧中世から現代へ

死と歴史―西欧中世から現代へ