歴史の面白さ

岡田暁生西洋音楽史:「クラシック」の黄昏』を読む。
素晴らしい本だと思った。250頁を切る厚さの新書に中世から今日まで(いわゆる「現代音楽」だけでなく,ジャズやポップスを含めた)の西洋音楽の歴史がきっちり紹介してある。しかも個々の作曲家やジャンルの音楽史的な意義がきちんと抑えられている上に,社会史的な視点がきちんと盛り込まれている。音楽の歴史を他の芸術ジャンル,政治,社会,経済,思想との関連で描きながら,個々の作曲家,名作の本質を明快に読者に伝えてくれる。つまり音楽への情熱と音楽を相対化する視点のバランスが絶妙だ。よほどの力量がないと出来ない技だ。
このような本が他の分野(文学,美術など)でも現れてくると,衰退する一方の日本の人文系の学問に関心を持つ若者が増えると思うのだが。
というか,今の日本の人文科学の深刻な問題の一つは,このような<入門書>があまりに少なすぎることだろう。