貧弱さの魅力

入場料がタダだったので,国立西洋美術館の常設展に立ち寄る。
企画展を見にいくと,いつも芋を洗うような人出なのだが,今日は適度な入場者数。ゆっくりじっくり見ることが出来た。
小さな美術館で,収蔵作品も少ない,とはいえ見応えのある作品が少なくないのも確か。
ともかく作品が少ない上,美術館自体が本当に小さいので,15世紀からアクション・ペインティングに至る西洋美術の流れをまさしく体験できる(もちろん,西洋美術史の全貌を知ることはできないけれど)。
どいうことかというと,コロー に見とれて,ふと振り返ると,ジャクソン・ポロックの絵が目に入ったり,ジョルジュ・ラ・トゥールを見て階段をおりるとキュービスムの大作が待ち受けていたりといった感じ...
歴史ごとの絵の本質的な差異がまさしく肌で体験できる。
そうすると,19世紀以降の絵の変化の早さ,大きさにはやはり驚かざるを得ない。そして近代の絵とそれ以前の絵を並べていると,どうしても前者がどうしても軽く見えてしまう。19世紀以降のどんな傑作も,15世紀の無名の画家の小品に敵わない。どうしても<軽く>見えてしまうのだ。
写真が発明されるまで,絵は外界を視覚的に表象できる唯一の方法だった。でも,決して本物そっくりに描ける訳がない。だがなんとか<現実>に近づこうと画家たちはそれこそ,知恵と精魂を振り絞った。その<思い>が画面に現れている感じがする。ところがそのすごみが近代の絵には感じられない。
それを感じさせてくれるだけでも,この美術館の存在意義は大きいと思います(世界遺産立候補というのは,悪い冗談だと思いますが...)。