美術を芸術家が語ると...

森村泰昌『美術の解剖学講義』を読む。
著者は古今東西の名画・名品を再現/再演してセルフ・ポートレートを取り続けているアーティストとして有名。その<方法>からして,美術,あるいはその歴史に極めて意識的なことは読む前から分かっていたけれど,やはりその明晰さには脱帽。
正直言って,アーティストによって書かれた芸術論がここまでシャープで,クリアでいいのかしら?と思ってしまうほどだった。それと語り口がうまい(ちなみに彼は関西人)。語りのうまさに楽しまされて,気がついたら,彼が論じている芸術家のもっとも重要なドラマに立ち会っていたとう感じ。
個人的には,カルティエブレッソン論,写真と映画の違いや女優論,レンブラント+ヴェラスケス論やフェリックス・ゴンザレス論,そして桂朱雀や牧伸二論にかんするページが目から鱗で本当に面白かったです。というわけで,今は彼の他の本が手元にあります。