ピエロ

 旅先で伊坂幸太郎『重力ピエロ』を読む。
 物語の設定自体は刺激的なのだけれど,途中で何となく先が読めてしまうこと,善人/悪人の区別がしっかりしすぎていることは大きな欠点と言わざるを得ないだろう。それと弟の個性を強調するあまり,兄=語り手が単なる聞き役にまわっている点も問題だ。
 一番面白く感じたのは作者の批評性だ,絵画や映画や性について弟が語っている所が一番面白かった。抜群の批評性を物語の構築にどうつなげるのか... 伊坂のこの後の作家活動が気になる。