シャブロールと過ごす書生気分な1日

今日は仕事がなかったので,朝から本屋で本を漁っては茶店で読書を繰り返し,しかも映画も見るという,学生時代のような1日を過ごしました。
今日見た映画はクロード・シャブロルの『ベラミー』(邦題『ベラミー刑事』)という映画です。
シャブロルは非常に多作で,しかもどの作品も水準以上という,今日では大変珍しくなった職人気質の映画監督です。しかもヒッチコックの影響がとても強い監督です。
『ベラミー』も冒頭の場面でブラッサンスの墓のアップから,墓地全体をカメラばパンしながらなめるように捉え,それから崖下の黒こげになった車と遺体を捉えるというロングショットはもちろん,バックに流れる音楽までもがいかにもヒッチコック風なのにはシビレマシタ。
もっとも作品はヒッチコックよりも,善くも悪くも複雑なストーリーで,語り口もずっと説明的です。保険金詐欺の謎を解くというのが主旋律のようなのですが,それはこの映画を売るためのパッケージング=衣装/意匠で,この映画の主眼は中年(というよりは初老か)夫婦のエロスと,主人公ベラミー刑事の過去にあります。このような凝った構成を,映画の弱点と見るか,個性として好意的に受け入れるかは,見る人の判断でしょう。
しかし,こうした一捻り効いた構成の映画が,大衆映画として受けいられる点が,フランス映画=フランスにおける映画ファンの懐の深さでであることは間違いないでしょう。
悔しいですが,『寅さん』シリーズが国民的な映画になってしまう国とは,観客の映画への造詣が違うようです。