カナダ映画が面白い

仕事が一区切りついたので,『ぼくたちのムッシュ・ラザール』を見てきた。私にとってはとてもいい映画だった。
とある小学校の教員が自分の担任の教室で自殺してしまう。その後任でやってきたのがラザール先生。新聞広告を見てまさしく学校におしかける。そして,「子供が大好きで,アルジェの学校で19年間教鞭をとっていました」の一言で,後任におさまってします。もっとも,後にラザールの妻は教員だったが,彼自身はレストラン経営者で教歴なんてないこと,妻と子供をテロで失い,自身が難民として受け入れをケベック州政府に申請していることが明らかになるのだが...
物語は,三つのテーマがうまく折り合わされて作られている。担任の自殺が与えたショックから立ち直ろうとする子供たち,テロの嵐が吹き荒れるアルジェから逃れ難民としての資格を得ようとするラザールの過去,彼の前任者マルチーヌが自殺した理由への問いかけ... 映画ではこれら3つのテーマのバランス加減が絶妙だった。
もともと,こうした政治,社会,心理的なテーマが複雑にからまった深刻なテーマを扱うのはヨーロッパ映画お家芸だった(ゴダールとかファスビンダーとか...)気がするのだが... 一昨年『Incendie』というレバノン内線をテーマにしたカナダ映画を見たときにも感じたのだが,いまや一昔前ならヨーロッパの志の高いプロデューサー,映画人がしていた仕事を今はカナダの才能あふれる人たちが映画にしている,そんな思いをますます強くした。
教育改革においても,移民・難民の受け入れ,統合においても今ではフランスのはるか先を行くカナダのいろいろな側面が覗けて大変興味深かった。しかし,いちばん素晴らしいなと思ったのは<喪>は時間をかけて,自分を見つめながら,他者とぶつかりながら少しずつ乗り越えていくしかないということを,さりげなく(お説教っぽい台詞はまったくない)でもとてもはっきりと画面が,映画のリズムが見せてくれることだろうか。若い友人には教員をめざしたり,学校で働いている人も多いので,そんな人たちに是非見てもらいたい。