みう・みまは大丈夫?

日本では清原選手の覚せい剤の話題で盛りあっているようだ(しかし,今年のゴシップ雑誌,ワイドショーはウハウハですね)。
さて,ルイス・フェルナンデスをご存知だろうか?
1986年にはプラチニとともに,メキシコのW杯でブラジルを破り(延長後のPK合戦で,プラチニが外した後にフェルナンデスが決めてフランスは準決勝に進出した),90年代にサッカーのパリ=サンジェルマンを率いていたフランスサッカー界のレジェンドである。
最近彼は自伝を出した。自伝の宣伝で,1月30日にロラン・ルキエが司会を務めるトーク番組に出ていた。彼の話が面白かった。今日のプロ男子サッカー選手のイメージは金,女,麻薬にまみれてとてもダーティになったと回想するルキエに対して,ルイスは彼がパリ=サンジェルマンの監督をしてるある時期から,若手選手の雰囲気が変わったというのである。何故かと尋ねるルキエに,ルイスは選手のリクルート方法の変化を持ち出していた。
ルイスの時代は,フランス国内のクラブチームがリクルートするのは16〜17歳の選手だったそうだ。ところが,選手の育成=囲い込みが若年化し,ルイスが監督の頃には中学生から,というよりは小学校を出るや即クラブ・チームが育成に乗り出すようになったそうだ。いわば子供が社会化する以前に,子供達はサッカーが全てという世界に放り込まれるのである。そして,プロ選手はサッカーの外にある世界の広がり,ルール,厳しさを知らないまま,引退まで過ごすことになる。子供が,使い方,接し方も教えられないまま,途方も無い額のお金を手にするわけだ。群がってくる,ずるい女や悪い大人のカモになるのも頷けてしまう。そういえば,ルイスの体験談を補完するような社会学の本を読んだことがる。ステファン・ボーの『国家への裏切り者』である。この本の中では,もっとたくさんの選手の事例が紹介してあった。また,サッカー選手を,浪費に走らせるフランスの差別,排除の問題にも多くのページが割かれていた。
さて,今日本で最も若年時から,選手の囲い込みが行われているのは卓球ではないだろうか?昔は相撲だったと思うのだが,最近は学生相撲出身の力士も増えてきた。一方,卓球は幼児の頃から始め,中学入学とともにエリートアカデミー(しかし,嫌味なネーミングだ,卓球協会のセンスの名前がよく現れてる)で寮生活を送り,まさしく卓球漬けの生活をする。幸か不幸かこれまで卓球は地味なスポーツだったが,ご存知のように,テレビ東京が金儲けの道具にしようとしている。
十年後に日本のプロ野球やフランスのサッカー界で起こっていることが,日本の卓球界でも起こるのでは,と心配するのは杞憂だろうか?さらに付け加えるなら,卓球のような地味なスポーツでさえ,メディア,スポンサーが囲い込みを行っているのだ。日本の野球やサッカー,あるいはフィギュアスケートがどのような状態か想像するのはそう難しいことではないだろう。

人種とスポーツ - 黒人は本当に「速く」「強い」のか (中公新書)

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