記念すべき日に:おめでとう水谷,丹羽,吉村選手!

NHKのBSでオリンピック卓球男子団体準決勝を観戦。
ドイツにはオフチャロフ選手,ボル選手という2枚エースがいるものの,けがの影響もあって,おそらく二人ともベストコンディションではない。しかもダブルスが若干弱い。
なので,日本は水谷選手が2勝して,ダブルスを取るのが一番確率の高い勝ち方で,ドイツはオフチャロフ選手とボル選手でシングルス3つを取る... というのが戦前の両チームの目算であったとは思う。
ドイツがシングルで3つ取る一番手っ取り早い方法は,ドイツの3番手であるシュテイガー選手を水谷選手にぶつけて,申し訳ないが捨て石になってもらうことだ。
そう考えると,オーダーの点から有利になったのはドイツだったと考えられる。水谷選手に,シュテイガー選手と,ボル選手,つまり,水谷選手にとっては頭の上がらない。かつての所属チームの大エースにして大先輩をぶつけることができたのだから。

現代卓球でボル選手が残した功績は大きい。今,中国に最も善戦が期待できるオフチャロフ選手も,そして水谷選手もボル選手の背中を見て大きくなった。オフチャロフ選手がコートであれほどマナーがいいのも,ボル選手を間近で見てきたからだと思う。世界でトップクラスの選手になるにはどれくらいの努力と節制が必要か,水谷選手はボル選手から学んだはずだ(当時,日本には手本となる選手がいなかった)。水谷選手がボル選手に勝った今日だからこそ,このことは卓球ファンとしては決して忘れてはいけないことだと思う。
だから今日の大一番は2戦目の水谷ーボル戦ということになる。で,幕を開けてみると,水谷選手の圧勝だった。ボル選手がピークを過ぎた選手ではある。とはいえ,これまで常に日本に立ちはだかってきたボル選手を水谷選手は終始攻め続けて,力でねじ伏せた。まさしく次元が違うような戦いぶりだった。
サーブ,レシーブも,ネットプレイも攻撃も前陣・後陣の守備も,カウンターも,オールラウンド・プレイヤーとしての水谷選手のいいところが全て出たそんな試合だった。
ドイツの監督ロスコフもこう語っている:
「吉村が一番手なのは予想していた。驚きではなかった。ターニングポイントはティモと準の試合だった。第1セット,ティモが7-2でリードしていたのに落とした。そこから準のプレイは見事だった。彼は前陣で特に良かった。前陣でプレイして準は主導権を握りティモにプレッシャーをかけることができた。今日の準は信じらない出来だった。彼の人生最高の試合だった。」
チームメイトに勇気を与えるだけでなく,会場の観客を虜にする試合ぶりだった。先日の個人準決勝の馬龍戦と同様に,卓球というスポーツの可能性,面白さを卓球をしたことのない人達にも伝える,そんな試合だった。
卓球3ステップレッスン

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精神的にも水谷選手はとても充実している様子だ。国際試合で時折見せていたメンタルの弱さも,今大会を通じはほとんど見せていない(精神的に少し追い込まれているなと感じられたのは,地元選手のカルデノ戦くらいだろうか)。
本当に素晴らしい試合だった。おめでとう,ありがとう水谷選手!

敗れたドイツだが,プレー以外にもさすがと思わせる場面があった。
水谷戦に敗れた直後のダブルスで,ボル選手は敗戦の動揺にもかかわらず,試合前にダブルスの対戦相手となる丹羽,吉村両選手を正視して握手をしていた。さすがドイツの英雄ボルだと思った。
また試合後,目頭を熱くさせる場面があった。オフチャロフ選手が水谷選手に祝福のハグをしていた。
水谷選手がここまで強くなれたのも,こうした立派な先輩,友人=ライヴァルに恵まれたからに違いない。
オフチャロフ選手は試合後,自身のフェイスブックでこんなコメントを書き付けていた。
Congratulations to Japan, they were too strong today and deserved the victory. Especially my future teammate Jun Mizutani was unstoppable.
負ける度に「悔しい」を連発して,相手への敬意・賞賛をまったく示そうとしない選手が多い,どこかの国とは文化が違う。どうかこの点は実力以上にメディアやスポンサーからちやほやされている日本の女子選手も見習っていただきたい!男子も女子も日本の卓球選手はまだまだかの国の男子の卓球から学ぶことは多そうだ。

でもとりあえずは,おめでとう,ありがとう水谷選手,丹羽選手,吉村選手!