リオ,卓球男子団体決勝,すごいぞ水谷選手!

相変わらずが卓球ネタです。
男子団体準決勝のレヴューをして,決勝のレヴューをしないのもおかしいので,簡単に...
勝負事に,「もしも,〜ならば」は禁句だとは思うのですが,惜しい試合でした。
まずはオーダーから。中国がABC,日本がXYZになった。これは日本チームが選んだのか,中国が選んだのかわからないが,日本としてはXYZの方が勝利する確率は高いオーダーであった思う。日本が勝つには水谷選手が2点取って,ダブルスを拾うしかない。それ以外の勝ち方はまずあり得ないことは,明白だった。そのためには,水谷選手を馬龍選手に当てたくない,というのが倉嶋監督の本音ではなかったろうか?
リオ直近の韓国オープンでは許听選手が馬龍選手を下して優勝している。許听選手はシングルスには出場していなかったが,二人の実力はかなり拮抗している。しかし,今年に水谷選手は許听選手をあと一歩まで追い詰めたことがあった。カタールかクェートで許听選手をフルセットの10-4まで追い詰めたのだが,そこから自ら勝利を放棄するような試合ぶりで8本連取されて負けてしまった。
オーダーに話を戻すと,水谷選手が2番で許听選手と,5番で張継科選手が当たることになった。日本が3-2で勝ちを計算できる最高のオーダーになった。
実際試合は日本の目算通りに進んでいく。
水谷選手は許听選手を僅差だが打ち破った。クアラルンプールでの二人の直近の対戦では(レヴューはこちら),許听選手が3-0で水谷選手を圧倒した。水谷選手の作戦はこの敗戦を踏まえたものだった。水谷選手本人の考えか,邱コーチの指示が,倉嶋監督の作戦なのかわからないが,見事な戦いぶりだった。
クアラルンプールでは,許听選手は水谷選手のバックへの返球が多かった。その際,水谷選手はバックハンドを使って,大抵クロスに返球していた。そのボールはフォワハンドほど威力がない(とは言っても,私から見れば凄いボールなのだけれど)で,許听選手にはバックハンドで強打したり,回り込んで長い手の遠心力を使った得意のフォアハンドを振り回す余裕を与えてしまった。
ところが!リオではバックに来たボールを,水谷選手は要所要所でストレート,しかも大変厳しいコースに返球していた。そしてそのボールで,あのフットワークのいい許听選手からノータッチのエースを奪っていた。また,バック側に返球しても挙筋選手に余裕を与えずに済んだ。
あのバックハンドのストレートはいくら水谷選手とはいえ,よほど練習したのではないだろうか。また,最終ゲーム,許听選手が先にマッチポイント,しかも余裕のある点差でマッチポイントを取ったことも,結果としては幸いした。あれで許听選手は守りに入り,デュース以降は自滅してくれたし,逆に水谷選手は開き直ったプレイで相手にプレッシャーをかけ,自滅を誘うことができた。
シングルの勝利の勢いでダブルスも第1セットは,あっというまえに丹羽・吉村ペアが取った。第2セットも最初のポイントは速攻でとった。2ポイント目もレシーヴの丹羽選手のチキータが炸裂したのに,返球されたチャンスボールを吉村選手が信じられないスマッシュ・ミスをしてしまった。
結果論だが,あの一本でせっかく日本チームに来ていた流れを相手に渡してしまった気がする。もちろん吉村選手のおかげで得点できた場面もあったのだけれど,あのスマッシュ・ミスで相手を落ち着かせてしまったのは返す返すも残念だ。

続 卓球戦術ノート (卓球王国ブックス)

続 卓球戦術ノート (卓球王国ブックス)