観客はもっと意志表示を!

今晩はリヨンのオペラ座のシーズン開始日だった。
ダンスで演目はアレッサンドロ・スキアローニ(Alessandro Sciarroni)振り付けの「回転,病気の動きヴァージョン(Turning, motion sickness version)」とマリアナ・マスカレル(Mariana Mascarell)の「悪魔が嫁を打ち,娘を嫁に出す(Diable bat sa famme et marie sa fille)」だった。
 マスカレルの作品は,今日日流行の日本の小説のタイトルみたいで,少々説明=ナレーションがくどかったが,子供の身体の発見というテーマと,振り付けが大変良く合っている気がした。舞踏の影響が強い感は否めないが,それでも大変美しくパワフルだった。
 一方,スキアローニの方はターニングというタイトル通り,延々とダンサーが舞台で弧を描くという作品だった。大変機械的で,実験的というにはあまりに冒険がなくて,センスはないけれど,お勉強だけはできる優等生の高校生か大学生の研究発表の振り付けのようだった。大変不愉快だった。非難の嵐かと思ったら,マスカレルの作品よりもウケがよかった。やはり,西洋の人間にはこうした分かりやすい作品が受けるのだろうか?リヨンが戦後の演劇で果たした役割を考えるとこんな作品が受けるとは,ちょっとショックというか,悲しかった。
 昔だと,地方都市といえどもこれほど野心の欠けた作品は,カーテンコールの時に轟々と非難を受けたり,その前に思いっきりドアをバタンと閉めて出て行く観客がいたと思うのだけれど。やはり,日本ほどではないにせよ,この国も劣化が進んでいるのだろうか?

ヴァレリー・セレクション (上) (平凡社ライブラリー (528))

ヴァレリー・セレクション (上) (平凡社ライブラリー (528))

ヴァレリー・セレクション〈下〉 (平凡社ライブラリー)

ヴァレリー・セレクション〈下〉 (平凡社ライブラリー)