爆弾を仕掛ける若者たち

本来なら互いにつながることののない,様々な階層,人種の若者たちがパリで同時爆弾テロを計画し,準備する。テロは見事に成功。その後,オペラ近くのデパート(オ・プランタンだろうか)で夜を過ごし,夜明けとともに逃走しようとするのだが... 夜明け前に機動隊が突入し結局は全員が...
ニースで7月に起こったテロのせいで,テロというのはハイテク技術を駆使して,気の遠くなるような準備をしなくても起こせるものだということが衆目の前で明らかになった後に,この映画のような手の凝ったテロの話は真実らしさを失いつつあることは否めない(その点,今後の『ホームランド』はどんな話になるのか興味深い)。また,テロ後にパリのど真ん中のデパートで夜を過ごすというのも... 真実らしさという点では説得力に欠ける。
だが,テロの実行のために若者たちが地下鉄を使って移動する一連の場面では,ほとんどセリフがないのに,観客の関心を掴む力があった。リュック・ベッソンの『サブウェイ』を彷彿とさせる(監督もきっと意識したに違いない)。
だが,この映画が面白いのはテロの成功後,手持ち無沙汰な様子で,デパートで夜明けを待つ,若者たちの様子を描いているところだろう。映画の中盤でテロが起こるので,映画の半分はデパートの売り場で展開することになる。捜査が進み,機動隊が突入するまで,若者はひたすら夜明けを待つのだが,このようなたいした事件がない時間帯を,しっかり描いているところが,この映画の面白いところだろう。爆弾を仕掛けた若者たちが全員,機動隊に問答無用で殺害されていくところも,含めてこの辺りはフランスで評価の高い北野武の影響もあるのかもしれない。もっとも男女関係の描き方は全く違っているけれど...

物語をあえて展開させないで,いわば時間を潰しをしている若者たちを,観客に飽きさせないで見せることはそう簡単なことではない。日本でも公開してみると面白いと思うのだが...