この世はフランス語の達人で溢れている!

先日,とある大学にフランス語を教えに行った時のお話。

教室に入ると,今までに見かけたことのない学生がいた。何か不安そうに周りを気にしている様子。この時期,卒業が困難な状況に追い込まれた4年生が苦し紛れにとる行動というものがある。フランス語の入門・基礎科目を全く受講したことがないにもかかわらず,時間割を埋めて,あわよくば単位を取るために,いきなり中級レベルの科目を受講してしまうのだ。そして彼らは自ら墓穴を掘ってしまう。そうした悲劇を避けるべく,これまでフランス語を学んだ経験があるかどうか確認してみた。「ある!」という返事だった。しかし,今まで一度も担当した記憶がない学生だったので,どこで学んだのやらと思いながら授業を始める...
試しにフランス語を読ませてみると... 発音といい,イントネーションといい,リズムといい,私よりも150倍は上手に読む!!!
多国籍化する日本の学校: 教育グローバル化の衝撃

多国籍化する日本の学校: 教育グローバル化の衝撃

ただし,日本語が若干おぼつかないので,フランス語でこれまでのフランス語学習歴について質問してみた。すると,くだんの学生は台湾からの留学生であることが判明した。彼女曰く,日本語科の学生なので1年間日本の大学で勉強することになったのはいいが,予想以上に日本語が難しいので日本語を専攻してしまったことを若干後悔しているとのこと。フランス語は台湾の大学で週8時間程度(!),3年間勉強したことがあるとのことだった。話はここまで...気になる点を幾つか...
1)専攻は日本語であるにもかかわらず,こんなにフランス語ができる人材が育つ教育システムはどのようなものなのか大変気になる。
2)1)の繰り返しかもしれないが,やはりシステムとして日本の教育制度はどこかおかしいのかも。何故なら... この国では,一昔前だと教師よりフランス語が上手な学生は,大抵帰国子女と相場が決まっていた。ところが,今やそうした学生は,近隣諸国からやってくるようになった。ちなみに,私が現在教えている学生の中で,英語が最もうまく話せるのは日本語を学びに中国からやってきている20歳の学生さんだ。どうして,近隣諸国ができることが日本にできない!?
3)私ごときがお金をもらってフランス語を教えていて,本当に許されのだろうか。
4)3)の変奏ですで,ずっと前から分かっていたことではあるのですが... やはりグローバル水準では私のフランス語はとてもフランス語教師なんかできるレベルではない。
5)昔は教師よりフランス語が上手な学生は帰国子女である(2)の繰り返し)と同時に,そうした学生が学ぶ大学は大抵はある水準以上と相場が決まっていたと思うのだが... 私がお世話になっている大学はそのような大規模校ではない。やはりこれがグローバル化ということなのか。
6)日本人学生はこんなにできる子と一緒に勉強できるのを大変喜んでいた。
というわけで,私も楽しい後期になりそうです!
グローバル化時代の教育評価改革―日本・アジア・欧米を結ぶ

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