コンラッド『闇の奥』を読んでみた

コンラッドの『闇の奥』を岩波文庫中野好夫訳で読んでみた。

闇の奥 (岩波文庫 赤 248-1)

闇の奥 (岩波文庫 赤 248-1)

新しい訳が光文社古典新訳文庫で出ているのだが,あまり評判が良くないみたいだし,かつて英米文学では中野好夫訳のお世話にはなっていたので,昔買い求めた文庫本を再び手に取った次第。
闇の奥 (光文社古典新訳文庫)

闇の奥 (光文社古典新訳文庫)

たかだか160頁程度の文庫本なのだが,昔の判型で1ページに活字がぎっしり詰まっている上,読めない漢字は多いし,文体が硬いわで,読了するのにえらく時間がかかってしまった。実はこれまでも何度かチャレンジして途中で挫折していた。
どうして再び『闇の奥』かというと,フラマン系ベルギー人の歴史家にして作家のデヴィッド・ヴァン・レイブルックが『コンゴ,ある歴史』のフランス語訳出版に際して,フランスのラジオ局に対して行ったインタビューがえらく面白かったからだ。また数年前に出た,『闇の奥』を翻案したバンデシネが,結構評判だったことも影響している。
で,面白かったどうか白黒はっきりしろと問われれば,「面白かった」と答えるが,期待通りではなかった。デヴィッド・ヴァン・レイブルックのインタビューを聞いて後に読むと,コンラッドコンゴの奥地での狂ったように象牙を探し求めるクルツの描写が,どうしても,抽象的(象徴的ではない!)すぎて,物足りなく感じられたからだ。やはりベルギーのレオポルド2世がアフリカ奥地で行った凄まじい搾取の様を知るには,600頁を優に超えるデヴィッド・ヴァン・レイブルックの著作を読むしかないのだろうか?これは私の想像力つまり,小説読みとしての資質が欠けているからなのか。それとも,コンラッドが色褪せて見えるほど,この分野での研究が進んだからなのか?いずれにせよ,コンラッドが期待外れだったせいで,逆に益々コンゴのことが気になってしょうがない。
世界最悪の紛争「コンゴ」 (創成社新書)

世界最悪の紛争「コンゴ」 (創成社新書)