ドナルド・トランプからフランソワ・フィヨンへ

来年5月にはフランスで大統領選挙が行われる。

今週日曜日11月20日にはフランスの中道・右派系の候補者を決める予備選挙の第1回投票が行われた。7名いた候補者のうち,サルコジ政権下で首相を務めたフランソワ・フィヨンシラク大統領の秘蔵っ子で,外相や首相を歴任し現在はボルドー市長を務めるアラン・ジュッペが決選投票に進んだ。来週日曜の決選投票で右派の候補が決定する。現職大統領のフランソワ・オランドはフランス人からは大変受けが悪い。しかも世界的に見て政治が大きく右傾化していることはフランスでも例外ではない。来年の大統領選挙でも,得票数上位2名で行われる決選投票に,左派の擁立候補はおそらく残るさえことができないのではと予想する人も少なくない。つまり,来週の予備選挙の決選投票で選ばれた右派の公認候補がそのまま大統領になる可能性が極めて高いと考えられている。
その20日予備選挙では,トランプ現象とは比べ物にならない大番狂わせが起こった!大方はジュッペ,サルコジの二人が決選投票に進むと考えていたのだが,投票2週間前のアンケートでは10パーセント程度の得票率しかなかったフィヨンが,あれよあれよと支持を拡大し,投票前には,サルコジ,ジュッペと並ぶ支持率を獲得していた。3者の激戦になることが予想されていたのだが,蓋を開けてみるや!フィヨンが44.1%,ジュッペが28.6%,サルコジが20.6%という結果となった。誰も予想し得なかったフィヨンの圧勝に終わった。これだけの番狂わせの後なので,決選投票の結果は予想するのは憚れるが,フランスのメディアは性懲りも無くフィヨンの勝利と予想している。といわけで,前回のエントリーで軽率にも,以下のように筆ではなくて,キーボードを滑らせてしまったことは反省している。

生活の全てを数字に置き換えて可視化した気にならないと気の落ち着かないフランスばかりを見ている者からすると,やっぱりアングロサクソン文化のアンケートは杜撰だと言ってみたい誘惑に駆られないわけでもない。

この歴史的ともいえる大番狂わせがなぜ起きたのか,今後の分析を待つしかない。ただ,明確に保守政治を表明している候補者に一票入れたいと感じながらも,サルコジに危険を感じた有権者の多くが最後のフィヨンを選んだのではないだろうか?
もしかすると,カダフィからの資金援助を受けていたと噂され,極右政党に魅かれる一部の伝統的な保守支援者の票を獲得するために,挑発的な発言を繰り返していたサルコジに,フランス版トランプの影を感じた人も少なくなかったのではないだろうか?トランプ当選の直近の影響は,大西洋の対岸でアメリカ大統領選挙2週間後に行われたこの選挙だったのかもしれない。

現代フランス社会を知るための62章 (エリア・スタディーズ84)

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