全日本卓球レビュー(4):水谷強し,でも男子は大丈夫?

昨日は平野美宇選手の試合ぶりについての感想だったので,今日は水谷選手について。
世間では新鋭の平野美宇選手の優勝は半ば予想外で,水谷選手の優勝は当然と思われているのかもしれない。
しかし,試合内容からすると,横綱相撲というか文字通り他を圧倒したのは平野選手だろう。肝心の松澤茉里奈選手との準々決勝は見ていないのだが,準決勝,決勝ともに内容はスコア以上の差がある試合だった。

一方,水谷選手については準決勝は本当に危なかった。本人も述懐していたように,平野友樹選手からの勝利はベンチの勝利だろう。水谷選手からしてゲームカウント0-2のポイント1-4の所でベンチがタイムアウトを要求して,流れが変わった。恐らく,ここが勝負どころ!と思えば早めのタイムアウトを取ることをいとわないドイツの卓球文化を生きてきた外国人アドヴァイザーがベンチに入っていたから取れたタイムアウトだろう。あれが,日本人のアドヴァイザーであれば,あのタイミングでタイムアウトは取れなかったのではなかろうか?もしかすると,水谷選手は彼に一生頭が上がらないのではないだろうか?タイムアウトのタイミングは本当に難しい。女子の決勝もゲームカウント平野選手の3-1の第5ゲーム,一時は平野選手が8-2と石川選手を引き離した。ここから石川選手が7ポイント連取で盛り返した。平野ベンチは8-7でタイムアウトを取ったのだが,もしも8-6でタイムアウトを取っていたら,もしかするとゲームカウントは4-2ではなく,4-1であったかもしれない。試合でどちらかの選手が9点取ると,試合は終盤という感じがする。だが,8点だとまだまだ先が長く見えてしまう。たった1点だが,卓球では1ゲームが11ポイントと大変少ない。しかもポイントごとに作戦を立てねばならない。さらにサーヴィスがネットインすると,たとえ点数に変化はなくとも,作戦を最初から考え直す必要がある。同じ種類のサーヴィスを同じコースに出すことは,尋常ではない勇気が必要だからだ。そうした卓球という競技では1点が本当に重いのだ。そのせいで一瞬タイムアウトを取るのが遅れた感が否めないのだ。
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話が逸れたが,水谷/平野戦を除くと男子の試合は退屈だった。吉村/吉田戦は思ったほど派手な撃ち合いにならなかった。水谷/吉村戦も,吉村選手にミスが多かった気がする。ミスを誘った水谷選手がうまかったのかもしれないが。水谷選手もオリンピックはおろか,昨年の全日本と比べてもパフォーマンスの質はかなり劣っていたのではないだろうか。力や技術よりも,試合運び,あるいは名前で勝っている印象がした。もっとも水谷選手が相手の力を見切っていて,ギアを上げなかったのかもしれないけれど...
しかし,そんな水谷選手を脅かしたのが1週間でたった一人だと思うと... やはり男子卓球の先行きは暗そうだ...
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