うっかりペネロペ(3)

フランスでは。今年の4〜5月に行われる大統領選挙の中道・右派の候補フランソワ・フィヨンが大問題になりつつある。
先週,予想しておいた通り『カナール・アンシェネ』が二の矢を放ったようだ。先週の記事では,フィヨン氏の妻ペネロペは1998年から2007年の8年間にわたって勤務実績がないにもかかかわらず,夫フランソワ(2002年まで)および,フランソワの補欠当選人マルク・ジューローのアシスタント(日本では政策秘書のようなものらしい)として,高額の給料(総額で50万ユーロ)を受け取っていたらしい,ということになっていた。

告発!政治とカネ

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ところが,これ以前そして,これ以後にも夫のアシスタントとして働いていたらしい。『カナール・アンシェネ』によれば,1988年から2013年までの間に(この間には夫フランソワの政治家としての活動に応じて空白期間がある)総額で831,440ユーロの給与を得ていたらしい。
国会議員であれば,法律で定められた枠内で自由にアシスタントと雇用契約を結ぶことができるので,恐らく法律上は問題がないのだが(だから,当初フィヨンもメディアに対して大変強気な対応をしていた),議員アシスタントの給与の相場からすると法外な給与を妻に与えていたことに批判が向いている模様だ。しかも『ル・モンド』紙によれば,イギリスのテレビ(ペネロペ女史はアイルランド出身)局へのインタビューの中で,ペネロペ女史は「私は夫の議員アシスタントであったことは一度もない」と発言したらしい(このインタビューの抜粋は2日の公営テレビの番組で放送される予定)。
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他にも,弁護士の資格を取る前の子供二人を,同じく自身の議員アシスタントとして,同じく法外な給与で雇っていたり,ペネロぺが議員アシスタントを辞めた後に,夫フランソワの知人が所有する雑誌『両世界評論』から,破格の給与を受け取っていたり,フランソワが実体がよく知られていないコンサルタント会社を所有していたり,元老院議員時代には余った議員アシスタントの経費を同じ会派の議員とプールして不正に受け取っていたという疑惑をもたれたり...とたった1週間の間でいろいろな事実/疑惑が浮かんできた。
大統領選挙の投票意図アンケートでも,1ヶ月までは大本命であったのに,疑惑発覚後は3番人気にまで落ち込みんだ。このままでは決選投票にも進めない。業を煮やした中道・右派の議員の一部は候補の差し替えを訴え始めているようだ。
事態は,どう楽観的に見ても「うっかりペネロペ」などと,のんきなことを言っていられる状況ではないようだ。
うっかりペネロペ Penelope tete en l'air (e-MOOK 宝島社ブランドムック)

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