温泉で思い浮かべるボードレール

体調は戻ったし,時間に余裕があったので,朝シャンならぬ朝温泉に出かけた。

バリアフリー温泉で家族旅行 (温泉ガイド)

バリアフリー温泉で家族旅行 (温泉ガイド)

行きつけ...とは言っても何ヶ月も立ち寄っていなかった近所の名湯に出かける。この温泉は男湯と女湯の仕切りが壁ではなくて,大きな木や観葉食物でできている。湯船に浸かると,屋内なのだが熱帯林の木陰にいるような気分になれる。泉質もすこぶるいい。打たせ湯もあって,肩こり,腰痛の時にはお世話になっている。露天風呂もあるのだが,住宅地に数年前に無理に作ったもので,壁に囲まれていて風情が全くない。木陰の方がはるかに気分がいいので,滅多に使わない。真冬はなおさらである。
ヨーロッパの温泉保養地を歩く

ヨーロッパの温泉保養地を歩く

この温泉は,時間帯を選べば(例えば今日のように,平日の8時前)人も少ない。というわけで心身ともにリラックスできる。
ここに来るといつも「彼の地は全てが秩序と美/豪奢,静謐,官能」というボードレールの詩句が思い出される。
彼の詩や文章を読んでいると,この人は人生の中でリラックスしたことがないのではないかという気がしてならない。一生を,愛人の腕に抱かれている時でさえ,極度の緊張の中で過ごしたという感じがする。温泉につかることがあったら,また別の詩情も湧いたのではないだろうか。この想像をフランス文学を真面目に勉強している人たち話すたびに,彼から白い目で見られてしまう。しかし,この温泉に来るとどうしてもボードレールの違う人生,作品というものを想像してしまう。こんな風に,いつもながらのおバカなことを考えながら,湯船でほんわか過ごした朝のひとときだった。
悪の華 (集英社文庫)

悪の華 (集英社文庫)