奇妙な大統領選挙
フランスの大統領は有効投票数の半数以上を獲らなければ当選とならない。そこで,4月の下旬に第1回投票で候補者を二人に絞り,2週間後の5月の上旬に最終候補者二人の間で決選投票が行われる。投票行動でよく見られるのが,第1回投票ではお気に入りの候補に投票し,第2回投票では嫌いな候補に投票しないというパターンだ。これをフランスのメディアは「第1回投票では選び,第2回投票では排除する」と要約している。
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さて,ここから本題だが,2017年の大統領選挙が従来の選挙と根本的に異なるのは,今回の選挙は形式的には2回投票だが,実質的には1回投票と変わりない可能性が高い点だ。第1回投票では極右政党の国民戦線党首のマリーヌ・ルペン女史が決選投票に進むことはほぼ確実視されているからだ。しかも現段階では,彼女が他候補を抑えて第1回投票では1位になることが予想されている。同時に,世論調査は第2回投票では,得票率が45%を超えることはないと予想している。
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なので,家族を法外な給与で政策秘書に雇い,しかもそれが偽装雇用の疑いがあるせいで大きく人気を落としている右派のフィヨン候補からすると,仮に人気が回復しないままでも,まだ十分に第2回決選投票に進み,大統領になる可能性が十分に残されているのだ。しかも,投票する方に第1回投票の決定的な重要性がどれだけ浸透しているのは定かではない。今年の大統領選挙から目が離せないわけだ。
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