フランスの大統領選挙から見えてきた日本の先進性

学者冥利につきるとは,このことかもしれない。
今年4月〜5月に行われたフランスの大統領選挙は,とある地理学者が2014年に発表した200ページ足らずのエッセーがほぼ予告していた通りに進行した。この地理学者は,メディアが内部抗争や政治資金問題などで揺れる右派の問題を大きく取り上げていた最中,全く違うシナリオを描いていた。すなわち,早晩フランス社会党が崩壊すること予想していたのである。
事実,今回の大統領選挙の第1回投票で社会党候補ブノワ・アモンは6%程度の得票率に終わった。『21世紀の資本論』で世界的な名声を獲得したトマ・ピケティを始めとする,多くの高名な大学人をブレインに擁しながらである。前回の2012年の大統領選挙第1回投票で,オランド候補が30%以上の得票率であったことを思えば,「社会党の崩壊」が誇張ではないことがお分かり頂けると思う。
多くの政治学者,ジャーナリストは,この歴史的な惨敗を社会党の政治路線,あるいは大統領候補者選びの方法で説明しようとした。曰く,オランド前大統領は2012年には左寄りの選挙キャンペーンを展開して当選しておきながら,在任中にはついに一度も必要な説明をすることのないまま経済的に極めてリベラルな政策を取り続けた。つまり社会党は自らを支持する層を裏切ったのだと。あるいは,党内の予備選挙で候補を選ぶと党内でもコアな党員にしか支持されない思い切り左寄りの政策を訴える候補者(ある種原理主義者)がほぼ自動的に選ばれてしまい,結局コアな党員以外に訴えることが重要な,大統領選挙キャンペーンでは呼び選挙で選ばれた候補者のフリーハンドを狭めてしまうのだと。