ガレット・ヴァルス・国政剥奪

友人とほぼ2ヶ月ぶりにランチ。
トンカツかガレットか迷ったが,今回もガレットの店に行った。友人は映画に詳しい。しかも『カイエ・ド・シネマ』が絶対にまともに紹介しないような大衆向けの映画に通じている。今回もDVDを3本貸してくれたので頑張ってみなければ!最も,大衆映画では,役者さんが辞書に載っていないような言葉を早口で,しかも庶民的な口調で話すので,字幕なしのDVDは大変辛い。最近は耳の不自由な視聴者向けにフランス語の字幕が付いている場合があるので,それに期待しよう!
話は,お互いの近況を報告した後で,フランスで今話題の,国籍剥奪条項を憲法に明記する事案についての議論になった。フランスでは圧倒的多数が賛成らしい。しかし,こうした条項が憲法に明記された事例は,ヴィシー政権下以来のことらしい。
最近ヴァルス首相のこの事案についての発言を聞いているとどうも逃げ腰だ。もちろん,ヴァルスは民主主義国家フランスの首相なので,国籍剥奪に関する質問に不快感を示したり,避けたりはしない。しかし,この問題の質問になると,瑣末な事例をあげたり,いかに自分が家族を愛し,祖国フランスを愛しているかといった話に終始する。ブラブラ,つまり無駄な言葉を弄して論点をずらそうとするのだ。
確かに,お家の一大事(少なくとも,フランスの政治家たちはそうした認識を持っている)なので,国民のまとまりが大事であり,事実国籍剥奪条項の憲法明記は,数字の上では絶対的な支持を得ている以上,ヴァルスの政策は効果を上げている。
しかし!だ。国民をまとめるために,ヴァルスは国民の中に「2重国籍者」というカテゴリーを作り出し,彼らを格下の国民に仕立て上げていることには,極めて無関心だ。おそらく彼は費用対効果では,直近の政治的効果の方が理念的コストよりもはるかに高いと踏んでいるのだろう。
 しかし,遠くから見ているとフランスがフランスで亡くなっていくような気がしてならない。杞憂に終わるといいのだけれど。